ファルスタッフ見習い

やわらかハートポイント@yawarakahpの日記 飲食、旅行、音楽など

割烹年無し/神田(2024/8/19訪問)

ブクマしているお店を開拓していこうシリーズです。

やわポは傘で片手が塞がることが異常に嫌いで(もう片方の手には常に気が狂ったようにスマホを握りしめており、両手とも塞がるとつまづいた時に危険であるため)、雨の日でも少しの距離なら傘を持たずに出掛けてしまうのですが、この日ばかりは失敗でした。近年の夏はゲリラ豪雨が多くて大変ですね。

職場を出るなり目当てのお店に当日予約のお電話を掛け、意気揚々と最寄り駅からお店に向かった……はいいものの、いざ神田駅の地上に出てみるとバケツをひっくり返したような大雨、そして雷。ちょっと前に出てきた時はこんなじゃなかったのに。

 

非常に不本意ながらコンビニで傘を買って、ほうほうの体でお店へお邪魔します。傘を差していても勢いよく吹き込んでくる雨でスマホの画面が濡れて、思ったように地図が見られず、うろちょろと迷ってしまいました。結果として予約時間からトータルで15分程度遅刻してしまい、平謝りするやわポを優しく迎え入れてくださる女将さん。ありがとうございます。

席について間もなく前菜が提供されました。上の写真左は金糸瓜三つ葉・赤貝の酢の物、真ん中奥は真鯛の昆布締め卯の花和え、右が鰯のつみれ汁です。

酢の物は穏やかな酸味が心地よく、赤貝の小気味良い食感と磯の風味が食欲の点火剤となります。

真鯛は余計なぬめりもなく適切な塩梅に昆布締めされ、出汁の旨味を含んだ綿雪のような卯の花衣をうっすらと纏っています。

つみれ汁につき、つみれ本体は驚きのレアタイプでした。ほろほろ崩れてしまいそうで、滋味深い汁とテクスチャの一体感があって素晴らしいです。今後つみれ汁を自作する時も真似したくなってしまうと思います。

お造りは増毛の赤海老と、白イカです。個人的には、年末の紅白歌合戦よりもこの日の紅白海老イカ合戦の方がときめきます。

ねっとりと濃密な白イカ。鮮度の良くないイカ刺しには独特のエグ味のようなものが感じられるのですが、こちらのイカには一切のネガティブ要素がありません。

赤海老はじっとり甘く、舌に纏わりつくような粘度がなんとも魅惑的です。鮮やかなピーコックグリーンの卵を絡めながら身の部分を食べてしまった後は、手掴みで頭に吸い付きました。海老味噌って旨味の爆弾ですよね。お酒が進んで仕方ない。

 

焼物は東京湾の鱧です。骨の存在を微塵も感じさせない鱧はしっとりと旨味を含んだ脂を湛え、咀嚼するまでもなく口の中で解けていきます。ごく稀に骨切りが全く功を奏していない鱧に行き当たることがありますが、もちろんそんなものとは別次元です。

そして付け合わせの美しさ。目にも鮮やか、ほっくり素揚げされた銀杏と、彫刻のように几帳面に面取りされて味が満遍なく染みたかぼちゃは、芸術品と呼ぶに相応しいでしょう。

 

マコガレイの煮付けです。ふわふわの身に甘めの地がしゅんでたまりません。

やわポは東北出身で、お正月のご馳走といえば子持ちナメタガレイの煮付けなのですが、カレイの肝をいただいたのは初めてです。鳥レバーのような濃厚さがありつつ血生臭さは無く、わずかな磯の香りがして、これ単体で最高のアテです。

以上が7500円コースの内容です。きときとのお魚尽くしで大満足!

ご厚意で潮汁を頂いてしまいました(あくまで店主のご厚意と私の人徳()の賜物なので、こういったおまけが無くてもお店に文句を言わないでください)。

すだちの清涼感がいいアクセントです。
潮汁の仕立てを大雑把に分類するなら、どこまでもクリアに仕立てる(お魚の脂もすっかり取り除く)タイプと上の写真のように濁りをそのまま残すタイプがありますね。
店主のご意見を伺ったところ、「澄んだ汁に仕立てるタイプは魚のアラ以外にも昆布や鰹節などの出汁を使って複合的な味にするタイプが多い。しかし複合的な味が美味しいのは当然であり、当店ではアラに使用したお魚だけの純粋な味を感じてほしいので、汁が濁ったとしてもお魚のアラだけで出汁を取っている」とのことでした。

このお話をされてから「生意気なことを言ってすみません」と謙遜されていましたが、このようにお料理に関するご自身の基本的な考え方を明確にされる方にお話を伺うと、単純に楽しいですし、非常に学びが多いです。

おかみさんが料理に合わせて出してくださる日本酒は、蕎麦猪口に注がれます。絵柄もポケモンミッフィーなど、親しみやすいもので、非常に和みます。支払い総額から逆算しても、ありえないほどお手頃です。酒呑みパラダイス......

素晴らしいお店を見つけてしまいました。季節ごとに通うつもりです(実際9月も2回お邪魔しました。通いたいお店には立て続けに3回行って自分の顔を覚えていただくルール!)。

ワンオペもしくはツーオペのお店であるため、予約は電話ではなく、メールの方が助かるとのこと。

一人でカウンター席に座っていても、大将が優しくお声がけくださるため、孤独を感じることなく楽しくお食事ができます。しかし、テーブル席で賑やかに会話しながらのお食事にも憧れます。機会があれば、みなさん是非ご一緒しましょう。